【感想】 アンダーグラウンド・マーケット (朝日文庫)

アンダーグラウンド・マーケット (朝日文庫)

アンダーグラウンド・マーケット (朝日文庫)

著者: 藤井 太洋

出版社: 朝日新聞出版

本書が描く東京の日常では、円 (表) とN円 (裏) のふたつの経済圏がモザイク模様をなしていて、経済的な裾野の側に広がる後者において、ソーシャルな信用ランクが生活階級を司る世界。この階級差による制約をできるだけ受けず生きていくためには、自身の信用ランクを高めることが必然となる。

実際にいま中国の一部の都市が、市民生活に信用ランクを導入している話をネットニュースで見聞きする。移民の比率が今後も高まっていく中、東京で“信用ランク”が浸透するとき、移動手段として自転車がメインであるような、小規模なウェブ制作の業界で暮らしている主人公らの生活はどのような様相であるか。自分は東京の地理に疎いので自転車移動の際の細やかな描写はともかく、業界としてはすこしかじったことのある話であり、ウェブやサーバに関わる描写は臨場感に富んでいておもしろかった。

都市でグローバリゼーションが突き進むことも、スマホの一操作で行える対価の支払いも、今もうあたりまえに来る。これらに加え、第二の貨幣と信用ランクの影響も絡み合う未来のひとつを描こうとするのが本書の試みであり、また、仮に明暗分からないどんな未来が現実になろうとも、人々の逞しい姿がそこにあることも想起させる。