【感想】 法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する

【感想】 法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する
法のデザイン

法のデザイン

著者: 水野祐

出版社: フィルムアート社

「法により創造性やイノベーションを加速させる」とはどのようなことなのか。本書は、法をデザインする、すなわちリーガルデザインのマインドが、これを可能とする道筋を示している。このマインドは、短絡的に不変の枠組みを定めるような方向性とは違う。本書の一部を以下に引用する。

大切なことは、ルールは時代とともに変わっていく/変わっていくべきという認識と、ルールを「超えて」いくというマインドである。ルールを超えていくことは、ルールを破ることを意味しない。ルールがどうあるべきかということを主体的に考えて、ルールに関わり続けていくことを意味する。ルールを最大限自分寄りに活かすことは知性の証明に他ならない。

また、コモンズについて《リソースの自由利用性》と定義し、この領域を《創造性、イノベーションの源泉となる「余白」》だと捉えている。音楽などの芸術的な分野や、不動産、家族、政治といった社会的な分野における、法とコモンズの関わりの現状と、展望を示していく。紹介されているいわばエッジの効いたビジネスやアートの実例に、うならされる。

個人的にはコモンズと聞いたならば、デジタル情報の世界で目にするCreative Commonsを連想する程度の、これまで使い慣れない言葉でしかなかった。実際のところコモンズは、有形な物でいうとたとえば公道や街の公園や公海なども含まれる、幅広い概念であるのだ。この考え方が新鮮で、自分に、現実の社会を新しく考え直すためのメタ視点が芽生えたような気がする。

本書の強いメッセージとして、法は、人々の社会的行動が潤滑に回るように、本来あるものだということ。さらに、法はデザインをするものということ (日々交わす契約の、法に上書きできる範囲での契約のデザインも含む。BtoBな場面で契約内容を練ることは経験しているけど、BtoCやたとえば個人住居の賃貸借契約でもデザインはあり得る)。私の中のルールが変えられたかのような、刺激的な余韻が残っている。