【感想】 アイの物語 (角川文庫)

アイの物語 (角川文庫)

アイの物語 (角川文庫)

著者: 山本 弘

出版社: KADOKAWA / 角川書店

知能として完全なロボットの文明が繁栄し、他方、人間の勢力が地球上でメジャーではなくなっている未来の物語。この物語の中では、アイビスという人型のロボットが、語り部を業としている人間の若者に語り部をする。そこでロボットから語られる複数の物語は、本書の著者の、AIやロボットと人間の関係性をさまざまに描いている他のSF小作品であるらしい。

本書を読み進めると、このような多重構造の物語に入り込みながら、「私たち人間の本性とはどのようなものか」という万年のテーマに向かい合わざるを得なくなる。感想としては、愚直な言葉で述べるしかなく、本書は想像をかき立てる素晴らしい物語だなと思った。

また、シンギュラリティの達成がほぼ確実視される一方、肉体的・知能的スペックがさほど向上するわけでもない人間の、種としての存続の有り様は今と未来では大きく違っている可能性を感じる。このような未来でも、「物語」という、人が人のあり方の理想を描き伝承する行為を、絶やさないのが人間なのではないかという著者の想いに共感する。そういえば、物語への着目は書籍『20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る』にもあった。「ものがたり」は人間の本性に触れるための大切なキーワードなのかもしれない。