【読んだ本】 正欲

【読んだ本】 正欲
正欲

正欲

朝井リョウ (著)

これは、レビューをどこかで見かけて読んでみようと思い立った小説で、図書館での本の貸出状況を調べると抜群に予約数が多いことに驚かされた。タイトルの『正欲』は、国語辞書には掲載されていない言葉だと思われるが、本書を読み終えた後には、“正しい欲”の意味だろうなとその字の通りに解釈してよさそうに感じる。

ぶっちゃけ、感想を体系的にはうまくまとめられない内容であった。他人を思う想像力には所詮限界があるんだぞ、そう諭されたように私は読後直後の自分を分析している。

そして本書の部分部分では、自分の過去の記憶や考えがふっと呼び起こされた。それは具体的には次の二つ。

  • 男子校に六年間通っていた10代の頃の経験から、「群れるな」「集団の勢いは危ういこともある」という教訓もしくは主義のようなものを形成した。いわば“俺たちは集団になるととんでもないこともやってしまう”ことへの恐れだ。マジョリティについて考えさせられる過程でこの恐れを再び認識した。
  • 21世紀へ変わった頃に、“The Internetは人々へ繋がりをもたらすことができる”地球規模のネットワークだと認識しはじめた。そうしてインターネットを使い続けて何万年か経てば、人間の性に影響する、たとえば「産まれた途端に世界と繋がっている感覚を持っている」ような、普遍的な認知の変化は生じるのだろうか。