【読んだ本】 旅行客を惹きつける観光改革 下呂温泉 価値創出プロジェクト

【読んだ本】 旅行客を惹きつける観光改革 下呂温泉 価値創出プロジェクト
旅行客を惹きつける観光改革 下呂温泉 価値創出プロジェクト

旅行客を惹きつける観光改革 下呂温泉 価値創出プロジェクト

瀧康洋 (著)

ちょうど所用で出かける先の、温泉地のプロジェクトについて書かれている。ということで、タイミング的な縁も感じて購入した。岐阜県の下呂温泉は、温泉 (♨) の管理方法にまず特色があると知った。各施設が各自で温泉を掘っているのではなく、地域で掘った源泉を集中管理して分湯しているという。温泉地としての根幹にこの共有という考え方が根付いているためかもしれないが、本書からは、下呂温泉では組織間の連携が強固であるような雰囲気が感じられた。

本書では、著者が関わる組織体が柱として進めている「官民連携」「マーケティング」「経営改善」における、様々な施策の具体例が紹介されている。デジタル的な手法で収集できるデータを徹底活用して現状分析を行い、月に一度の組織横断的な会議で共有し、問題点を改善して結果を出していく。私が「ほー!」と感銘を受けたのは、次の考え方だ。旅館が、宿泊客の減少や働き手不足などを理由に、「宿泊客の単価を上げてかつ客室の稼働率を下げて、施設としての収益を保つもしくは上向かせる」という経営方針をとった場合、飲食店などを回遊する観光客が減少することになり、結果的に地域としてはそれは良いことにはならない。また、旅館側からの「飲食店が伸び悩んでいるなら、宿泊プランの夕食を外食可能にして誘導しよう」という発案も登場する。なるほど、地域を一体化して捉えたこのような共存の発想に私はこれまで至らなかった。

下呂温泉で見かけたポスターに書かれていて気になった、“下呂市DMO委員会”なる組織が、如何なるものかを初めて把握できたし、実際に出かける地域で行われている施策について、実施者によって理念から解説されているという意味でも、いいタイミングで本書を咀嚼できたと思う。

参考リンク

参考写真