【読んだ本】 AIにはない「思考力」の身につけ方 ――ことばの学びはなぜ大切なのか?

【読んだ本】 AIにはない「思考力」の身につけ方 ――ことばの学びはなぜ大切なのか?
AIにはない「思考力」の身につけ方 ――ことばの学びはなぜ大切なのか? (ちくまQブックス)

AIにはない「思考力」の身につけ方 ――ことばの学びはなぜ大切なのか? (ちくまQブックス)

今井 むつみ (著)

2025年2月現在、仕事でちょっとしたアイデアが欲しいときにはChatGPTへ質問を投げたり、Geminiに口頭で聞いてみたり。また、GitHub Copilotが提案してきたコードを採用してから手直しすることも普通に行っている。こうして今どきの生成AIを使い慣れてくると把握できるのは、生成AIは「統計処理の物凄いお化けだ」ということだ。学習済みデータに含まれる過去の例を巧みに組み合わせて、質問に対する極めてそれっぽい回答を出力する機構だ。

本書は、思考力について取り上げ、今どきの生成AIはそれを持たないことを簡潔に説明している。また、人間が幼年期よりことばを会得しながら養い磨く、直感と推論という能力が、思考力の要であるとも教えている。頭を整理して感覚を拡げてくれる良書だ。

思考力と聞いて思ったこと。生成AIの話にとどまらない突然の私感だが、これからの未来には、極端な発想に基づく、強大な拡散力によって幾度も沸いてくる多勢の情報になびくままなのか、思考力を用いてそれを自己の規範に照らして検証できるのか、この立場の違いが一人一人にとって極めて重要になり、生き様を決めると思う。そして結局のところ人間は、今どきの生成AIが持たない思考力を用いて、人間から発せられる情報を自らが判断していかねばならんのだなあと……。