【読んだ本】 海の歴史

【読んだ本】 海の歴史
海の歴史

海の歴史

ジャック・アタリ (著), 林 昌宏 (翻訳)

原題『HISTOIRES DE LA MER』。海というものを大きく捉えた書物を突然に読みたくなり、図書館で入手した。著者はフランスの方のようで、国益や国防に関して述べる部分においては、フランスの過去を鑑みるとともに今後を叱咤激励するようなニュアンスがある。この部分では、他の部分と気色の違う著者個人の思い入れを特に感じて、ちょっと面白く思った。

本書の内容は、海から捉えた人類史といった様相のもので、人類にとっての海を生物的にそして文化的に捉え直し、海の重要性への注視を促していた。地球史で学ぶところの海の生成過程、海を発祥とする生命の誕生と陸への進出や、人類が船を発明して海を渡るようになってからの、資源確保の場、交易の動線、そして戦場としての海まで網羅されている。

そして終盤は、現代の海産資源の枯渇と環境汚染の問題に至る。地球の海を痛めては人類は生き続けられないという強い警告と、状況緩和の改善案を示して本書は終わる。今度私が海を見に行ったら、その視覚的な広さや深さだけではなくて、海の持つ時間的な奥行きや人類の依存度も、暗にそこにみえてくるんじゃないかなと思える。