【読んだ本】 月は無慈悲な夜の女王
月は無慈悲な夜の女王
ロバート A ハインライン (著), 矢野 徹 (著)
このSFに描かれている、人間の居住地としての月と地球の相互関係は、工学面での進化の度合いを想像するにあと50年ぐらい先、それぐらいの未来には現実化しているかもと私は感じた。ただし計算機の変容に関しては、20年も経たない間に本作が描写する世代へ、ひょっとしたら行き着きそうな気もしている。寂しさを抱き、友だちの概念を思考に用いるかようにみえる計算機は自然と生まれるのかもしれない。計算機の中のジェンダー傾向を、計算機がジョークをどのように捉えるかによって外部から推測できるかもしれない。ちなみに読後に調べてびっくりしたのだが、本作は1965〜1966年に発表されたものだそうだ。なんという先見性!
途中から壮大な活劇に変わった本作を読み終えた後なら、邦題の言い回しに、なるほどなあと納得したのだった。月に百万人単位で居住できるようになる時、月の政府のどのような政策が人々の不満を高めて反乱を招くのか。そのような問いかけを自分に課して、一言でいうとSFらしいトーンの語りに乗ってイメージを抱いていくのは素直に面白かった。