人間非機械論 サイバネティクスが開く未来 (講談社選書メチエ)
西田洋平 (著)
最初は図書館で借りたものの、内容がこんなに濃厚だと貸出延長しても読み終えられないわ……と判断したので本書は購入した。一度読み通しただけではあまり掴めていないと感じるものの、人間や生物における“自律”という言葉の意味や、たとえば「情報が飛び交っている」と言った場合の“情報”の意味を、自分が新たに捉え直すための栄養は本書から取り入れることができたと思う。また、ぼんやりとしか知らなかった“構成主義”を文脈で触れることができたり、“間主観的 (intersubjective)”という言葉を仕入れることができたりと、知的な興奮が絶えなかった。
CPU/GPUをぶん回してたどり着く演算結果と、人間や生物が生まれながらにして会得する物事の理解の仕方とは、いったい何が違うのか。人間としてはこれを今後十数年のうちにうまく把握しなければ、自我の意味付けにも影響しそうな気がするわけだが、そんな時は、本書が解説している、人間・生物非機械論としてのサイバネティクス・パラダイムに着目してみるのは一つの道だと思う。