司法記者 (講談社文庫)
由良秀之 (著)
テンポよく読み進めることができるのであるが、進むにつれて「ひでえ内状だ……、このままだと冤罪を成立させかねない……」という切迫感も膨らんでいく。しかし後半から、Kindleでいうと進捗53%くらいのところから、フッと風向きが変わって雲間が見えてきた。
著者は実際に特捜検事の経験者でもあり、検察の捜査に関して詳しい解説が所々に挟み込まれている。また、強い権力を持った組織が、自らの願望に押されて舵を切れなくなって突進する構図も明らかにする。私は、事件の謎は事実のパズルを組み合わせることで解いてほしいし、それはパズルの凹と凸の組み合わせ方を調査と閃きによって変更して全体を整合させるべきで、パズルの形を潰して穴を埋めるように事実を捻じ曲げてはいけない、こう考えざるを得なかった。