アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか (文春e-book)
ハンナ・フライ (著), 森嶋 マリ (翻訳)
本書は分かりやすく、現代の社会生活において動いている判断機構のどこそこに、アルゴリズムが介在していることを感じさせてくれる。また、稀な例なのかもしれないが、アルゴリズムの出力結果を疑わずそのまま従うことによって発生する弊害や事故にも意識を向けさせられる。
機械学習もアルゴリズムの一種だと考えるとして。ちょうど2022年12月頃から、ChatGPT (ChatGPT: Optimizing Language Models for Dialogue) が高性能なチャットボットとして盛り上がってきている。ChatGPTは、私が試した範囲において、“文法的”には破綻していない答えを返すし (答えが論理的に正しいとは必ずしも言えないことに要注意。先ほど試してみたところ下記の画面キャプチャのように“数学的”には破綻している答えをでっち上げる才能もある)、内部の言語モデルに取り込まれている分野・情報に関しては全能の神と言っても過言ではないボットだ。恐ろしく知的な人間のごとく受け答えできることに驚きを隠せない。
ChatGPTに代表される卓越したサービスが登場して私にも容易に見えるようになったのは、絵画や文学や音楽といったアートな領域にも、機械学習から生み出される作品が溢れるだろうという近未来だ (実際溢れつつある)。アルゴリズムはきっと、過去の音楽を大量に取り込んで耳辺りの良い旋律の曲を無数に生み出していくだろう。このような状況はアートの本質を問うことに繋がり、本書の著者は、アートを作り出す者がその時抱いた〈感情〉がアートを受け取る者の感情を動かすのではなかろうか、といった問題提起をしている。
また、アルゴリズムを賢く使っていくための提案もある。アルゴリズムを人間の武器の一つとして捉え、出力の偏り (たとえば倫理に反する偏り) は必ず調整しやすいようにしておくというものだ。過去の踏襲とは異なる趣の未来を、人間の意志で作りたいなら、あえてその意志に基づいてアルゴリズムを導くべきだな、と私も思う。