サーキット・スイッチャー (ハヤカワ文庫JA)
安野 貴博 (著)
車の自動運転レベルが最高の5を達成して「完全自動運転」となるとき、乗員が車外を見るための窓は無くても構わなくなる。車が、集中のための仕事部屋にも、介護を要する方が旅行する空間にもなるような未来の到来は、数年先というわけではなかろうが、肌感覚としてはとくに不思議ではなくなった。
SFである本作は、自動運転のアルゴリズムに人命を委ねつつある社会へ、わかりやすい一つの問いかけをしている。この問いかけに対する万人にとっての正解はまだないかもしれない。モビリティの進化はどうなっていくのか興味惹かれる私にとって、サーバ管理をやっているような人には現実味ある技術が登場する点も含め、本作はめちゃくちゃ面白かった。