【読んだ本】 「深層」カルロス・ゴーンとの対話~起訴されれば99%超が有罪になる国で~

【読んだ本】 「深層」カルロス・ゴーンとの対話~起訴されれば99%超が有罪になる国で~
「深層」カルロス・ゴーンとの対話~起訴されれば99%超が有罪になる国で~

「深層」カルロス・ゴーンとの対話~起訴されれば99%超が有罪になる国で~

郷原信郎 (著)

しばらくは忘れていたが、「あれはどう説明されるものなのだ?」という戸惑いと懐疑心を、また強く抱くことになった。ゴーン氏が2018年11月に東京地検特捜部に逮捕され、2019年12月に日本を脱出してレバノンで記者会見を開いた、あの一連の事案。

当時は、推定無罪の前提なしに、報道によって世論が作られていく構図がどこか感じられた。報道の情報源が非常に限られている、内容が政治的かつセンセーショナルで他社に先んじる速報性が最重視される、という二つの状況が重なったとき、報道は、情報元が意図する一色に世論を染める格好の手段となりうることは論を待たない。

本書は、東京地検特捜部の検事も経て現在は弁護士という著者が、脱出前からゴーン氏にインタビューを行って記したもの。具体的に日本の刑事司法制度の問題点をあぶり出し、実状を“人質司法”と断じている。国際的な比較で説明されている制度設計上の問題や、慣例化による機能不全がそこにあるらしいと読みとった私が感じたのは、お上を疑う機能をデフォルトで備えそれが常時働くように、日本社会と組織と個人のOSを更新する必要がある、ということ。

本書の終盤では、この事案を深層から駆動した歯車を二つ見極めたかのように、特捜部のある個人と、日産自動車のある個人に、言及をしている。それぞれの組織の中の歯車は、論理の衣を着た感情や剥き出しの欲をその力の源としてしまったのかどうか、数年先かもしれないが、事案の説明がもしなされれば、分かるのであろう。