葉っぱはなぜこんな形なのか? 植物の生きる戦略と森の生態系を考える
林 将之 (著)
うちの子どもは、かなり小さい頃からシンボルマークの記号や葉っぱの形に興味を持っていたので、そういった類の図鑑を家に揃え始めていた。すると葉っぱの図鑑に関しては自然と、著名な樹木図鑑作家である「林さん」 (我が家ではこう呼んでいる) の良書を必ずセレクトすることになる。
その林将之氏作の本書は図鑑ではなく、エッセイの色が濃いものであって、著者の生い立ちや思考の方法、自然観が述べられている。葉の形状や葉の付き方、樹木の生育状況を観察し、そこから植物が生きるための戦略がどのようなものであるか、仮説を立てて考察する。著者は、既存の説がどうであるかにはさほどとらわれずに、自身の知覚で考えて仮説を立てるというスタンスを己に課していることがよく伝わってきた。
話題は植物だけに留まらず、クマ、シカの人間との関係性、日本でのオオカミの絶滅の影響など、森の生態系へと広がり、最後には、人間とは自然の中の存在なのか外の存在なのか、という問題提起がされる。もちろん二項対立とはならない。なお、本書にある「植物は人間を意識しているか」という問いが、たいへん印象深かった。なぜならば私にとって、植物の立場から人間を見ている向きの思考方法が新鮮であり、自分の思考が一面的であることに気付かされたからだ。
紅葉ハンドブック
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