おもしろくて、秋の夜長に、ほぼ一気に読んだ。タイトルの「自衛隊特殊部隊」はどのような組織なのか、本当に存在するのかさえ知らなかったものの、ところどころ、私でも「ここはフィクションではない。作者が知る現実を描いている」と明瞭に感じられる記述があった。
弾丸が頭上を飛び交っている状況では、指揮命令系統に沿って報告を上げて判断を仰ぐことはできない。自分たち組織は何のために動いているのか、その目的が身体に染み込んでいなければ、こうした極限の場での各自の即時判断はできない。例えばこういった、組織の普遍性を記述したところだ。また、自衛隊の組織のあり方や隊員の苦悩に関する問題提起が、行間ににじみ出ている気がする。
小説としての伏線の回収具合には意外性があってハッとさせられた。これは作者が読者に投げかける、思考訓練の材料かもしれない。また、本書は、「もっとも大きな絵を描いているやつの姿は見えない。なぜならば陰謀のプロは現れるはずがない」という世界観に基づいているものと思う。他方はたして今の世界情勢では、どうなっているのだろう、と考えさせられもする。