路 (文春文庫)
吉田修一 (著)
伏線が集まってくる予感はしていた。生きていく中で人が抱くであろう希望や思いを、路にまとめあげた珠玉の作品だ。
思い返せば私は、2006年の年末から年明けにかけて、両親と初の台湾ツアー旅行をしていて、有名な観光地を巡ったりした。新年を迎えるカウントダウンのときには地上で盛り上がる大群衆の中にいて、同世代のツアー仲間と、露天で買った台湾ビールを片手に、Taipei 101のビル全体から豪勢な花火が上がる様子を眺めた。台北の街がまとう夜の熱狂感を、懐かしみながら本書を味わった。あの数日後の2007年1月5日に、本作品の中心にある台湾高速鉄道は開業したのだそうだ。
本書を読んで、台湾の歴史的背景などほぼ何も知らずの状態で旅行してたんだなと、痛感させられている。