【読んだ本】 スバル――ヒコーキ野郎が作ったクルマ

【読んだ本】 スバル――ヒコーキ野郎が作ったクルマ
スバル――ヒコーキ野郎が作ったクルマ

スバル――ヒコーキ野郎が作ったクルマ

野地 秩嘉 (著)

中島飛行機を前身とする企業の物語なので、第二次世界大戦における航空機の役割や、日本での開発の実状に関する記述も少なくない。戦争を、「どのような目的のために、国家が論理的にどのような戦略を立て、それをどのように統括して遂行したか」を示す大局的な記録だと認識するとして。私が本書にて初めて知ることができたのは、敵国の本土を攻撃可能な戦略爆撃機が戦争終結兵器として極めて有効であったこと、かつ、当時の日本国は生産技術的にこれを作り得なかったという事実である。

企業も、競合に対して優位性があるものを作るところが生き残る。本書には、SUBARU (旧・富士重工業) が、自動車市場において自分たちの優位性とは何かを、迷いながら見出してきた歴史が記されている。出資銀行による束縛や、他社の車を受託生産していた過去があったとは知らなかった。また、旗艦車のLEGACYがモデルチェンジのたびに“アメリカナイズ”されてきたのは記憶に新しいが、アメリカを最大の市場とする製品企画に舵を切った経緯も、アメリカのディーラーの生の声とともに説明されている。

「パイロットを守る」が原点というSUBARUの優位性は、2020年後半に登場が予告されている新型LEVORGでは、どれほど濃厚に表現されているだろう。一人の車好きとして個人的にはとても期待している。なお、本書の「長いあとがき」にある、著者ならではの生い立ちとSUBARUにまつわる話には、あとがきにふさわしい説得力があった。