【読んだ本】 地面師たち

【読んだ本】 地面師たち
地面師たち (集英社文庫)

地面師たち (集英社文庫)

新庄耕 (著)

弱みのあるターゲットを見極める。ターゲットを間違いなく騙せるよう、可能な限り周到な計画を立て完全な準備を整え、じっくりと襲う。相当に切れる策士に統括された詐欺ビジネスのチームが、ターゲットから不動産の利権を餌に多額の金を奪うさまを、私は共犯者として、契約を“クラック”する頭脳の戦争として楽しむことができた。本作はこの手際の描写が実際的で、見事な手際に呆れるほどの感銘を受ける。

他方で本作は、精神が歪んでしまった故に、人が犯罪の策士として完全動作するさまも織り込んだストーリーである。このような人の狂気を、さもありなんと感ずることはできるが、狂気の受け側を想像もし、人の弱さも痛感させられる。つまり、欲がある私がもし策士の狂気に対面したら、詐欺を暴き生き抜けるというような、いわゆる勝てる気が、ほとんどしません……。