【感想】 欺す衆生

【感想】 欺す衆生
欺す衆生

欺す衆生

著者: 月村了衛

出版社: 新潮社

福岡県弁護士会サイトの弁護士会の読書というコラムを、なにかのきっかけで、以前からチェックしている。そこで紹介されていた本書「だます しゅじょう」は、詐欺を様々に詰め合わせて展開していく物語であった。

人を騙しての金稼ぎに関して、ある一線を引いて身を立てていた主人公が、脱出困難なスパイラルへ堕ちていく様子は、息苦しくてこちらの気分が塞ぐほど。だが、「その一線の意味をどう感じるか」とか、「いま私は『堕ちていく』と書いたが、実際にdownなのかそれは逆にupなのか」と考え始めると、絶対の答えは一つではなさそう、というのが今の私の答えになる。

多少大げさに言えば、社会での生存本能と倫理観の、交線を、人生の中でどういう形にすることを自身の善とするかの、複雑さを垣間見せている物語だ。各種の詐欺のメカニズムが把握できる点や、実世界の時事ネタを取り込んでいる面白さも良かった。