【感想】 いま、絶望している君たちへ パラアスリートで起業家。2枚の名刺で働く

【感想】 いま、絶望している君たちへ パラアスリートで起業家。2枚の名刺で働く
いま、絶望している君たちへ パラアスリートで起業家。2枚の名刺で働く

いま、絶望している君たちへ パラアスリートで起業家。2枚の名刺で働く

著者: 初瀬勇輔

出版社: 日本経済新聞出版社

障害者に特化した人材紹介会社などを立ち上げている方の、半生記。著者は、大学生時代に緑内障による視覚障害者となった。その後は中学高校時代に部活動でやっていた柔道に再び打ち込み、パラアスリートとして活躍もしている。

とても正直かつ赤裸々に描かれている、片目ずつ「見えなくなった」ことで陥る絶望は、もし私が著者の立場なら、それがどれだけ自分を萎縮させる程の深さなのか想像できなかった。そこから著者は、困難に対して自分をリブートする。障害者の仕事のあり方についての、著者自身の就職活動と仲間から得た知見をもって会社を興し、道着の帯を締め、拓いた道を進んでいる。

視覚障害がある方の、たとえば、スーツの上下や靴下の左右のペアの揃え方、図書館の本の読み方、といった日常的HOW-TOを知ることもできた。後者の図書館の本については、書物のバリアフリーを実現する技術の存在自体はやんわりと把握しているが、「何をどこで借りるのか」という実際を私は知らず。サピエというサイトで書物の音声データをダウンロードできるそうだ。

また著者は、2020年開催の東京パラリンピックを、障害者がアスリートという文脈においてだけでなく、多様な社会の一員として大きく取り上げられる機会になると捉えている。これは、先日の第25回参議院議員通常選挙で、2名の重度身体障害の方が国会議員に当選したことで私が感じた点と同じで、なるほどそうだと思う。

本書を読んでからふと気づいたのは、勤務場所の敷地にある点字ブロックの色が、敷地の路面のレンガや石材としっかり同系色にしてあること。いわゆる見え方がステルスな点字ブロックだ。本書で述べられている、弱視の人にとって見えにくい点字ブロックがこんなに身近にあるとは……。“正確に知って改める”ことで障害を減らせる、誤解が解ける、その前段階の事柄は、世の中にまだまだあるのだと考えさせられる。