【感想】 ハロー・ワールド

【感想】 ハロー・ワールド
ハロー・ワールド

ハロー・ワールド

著者: 藤井太洋

出版社: 講談社

読む前の、軽く流して読めるものという予想と異なっていたのは、読者の側の、ITを理解するスキル、そして、ITを現実世界に適用する際のモラルをどう考えるかといった想像力を、試されているかのようなストーリーであること。こういう予想外は、挑戦的で楽しい。そこで、どうせなら主人公の心情にしっかり浸りながら楽しむべく、本書を二度読んだ。

本書は5つの物語から成る。主人公にはソフトウェア開発の腕があって、当初は「何でも屋」を自称しているエンジニアだったが、次第に自覚的に、社会的な問題解決のためにその能力を発揮していきながら物語は進行する。各物語に、私なりのキーワードを添えると次のようになる。

  • 「ハロー・ワールド」: アプリ配信, スパイウェア, 秘匿と正義
  • 「行き先は特異点」: GPS, 自律機械の生命感
  • 「五色革命」: ライブ配信, 革命
  • 「巨象の肩に乗って」: 検閲, 暗号化メッセージングと自由
  • 「めぐみの雨が降る」: 仮想通貨, スマートコントラクト, 経済施策

どの物語も、技術的にはほぼ現実味があるんじゃないかな……と思わせる。そしてなぜかSF的な近未来というより、まさに「今」の、臨場感に満ちている。