【感想】 Black Box (文春e-book)

Black Box (文春e-book)

Black Box (文春e-book)

著者: 伊藤 詩織

出版社: 文藝春秋

赤裸々な情報の公開が好まれない風潮を否定できない日本において、真実を知ることの難しさを問題提起し、かつ、その壁の先になにがもたらされるのかを照らす、ジャーナリズムの書だと感じた。

準強姦 (2018年時点の刑法の定義でいうと準強制性交等罪) と認識されるシーンを含む前半は、次のようなことを思い、悶々としながら読み進めた。1) 事件直後の早い段階から専門家 (弁護士・警察など) へ相談すべきではないか。2) 被疑者との接触には極力、代理人を立てるべきではないか。3) メールヘッダの解析をすれば、被疑者の居所が分かる可能性があるのではないか。

しかし、著者が事件を公表するために週刊誌の取材を受ける決意をした後半、メディア記者の情報収集力が加わったこともあり、新たな黒い背景が見え隠れしてくる。被疑者に対する第三者の“忖度”があったゆえに、刑事事件としての捜査が進展しなくなったのではないか。

社会は個人から成り、個人から社会を変えていかなければ、という著者の主張と自身の行動は、本書の存在が示すとおりまったく一致している。それは岩のように重く固く、現代の強い共感を呼ぶものと思う。