【感想】 暗幕のゲルニカ

暗幕のゲルニカ

暗幕のゲルニカ

著者: 原田 マハ

出版社: 新潮社

この読書に入る前に何らかのテレビ番組で観た、妙に印象に残ったモノクロームの絵画。あれがピカソの『ゲルニカ』なのかな?と、本書を読み進めるに連れて気になってきて、確認してみると偶然だが事実そうだった。ちなみに読了したKindle本には、なんの挿絵もなく活字だけ。そして自分は絵画に関する知識を特に持たない。したがって、本書での表現は、私に活字から絵画そのものを連想させる描画に成功したとも言える。

20世紀パートでは、ピカソと彼を取り巻く人間関係とともに、第二次世界大戦に突入していくヨーロッパの情勢も描かれている。本書は「史実に基づいたノンフィクション」なわけだが、この情勢の描写が私には意外に強く響いた。すなわち、戦時中に敵軍が生活圏 (仏・パリ) に実際に入り込んでくる、侵略が、都市の文化をどう破壊するのか。また、侵略とは、人間の未来への意識をいかに削ぎ、精神をどれほど弱らせる異変であるか。

時事にまつわる連想として。このような悲劇的な経緯が土地に染みこんでいる文化圏だから、自由や民主主義が貴重であることを理解し 、それを失わないようにするための決意や制度が、なるほど、社会的に強固なのかもしれないとひとり想像したりもする。←公文書改ざんの日本での事象を鑑みて

最後に内容が明らかにされる主人公の方策も含め、本書は、たとえば「敵視」の捉え方を考えさせてくれる。そして、少なくとも素人の私にとっては、芸術作品をみるときに何を知ったらそれを観ることになるのか、ということも教えてくれたかも知れない。