【感想】 戦略参謀

戦略参謀

戦略参謀

著者: 稲田 将人

出版社: ダイヤモンド社

文学表現的には淡白な形で進行していくのは、状況も憎悪もリアルすぎる社内の人間模様。佳境に入るとぐいぐい引き込まれてしまう迫力に満ちていた。

文中では『成功した創業者』を、わざと二重の鉤括弧で囲ったキーワードにしていて、これはおそらくは、会社が順調に伸びていく前に創業者が初期にいかに懸命に行動と修正を高速に回していたかを、ひとつの象徴として扱い、そこに意識を立ち返らせるためだ。

また、会社の成長とは本来、付加価値を生み続けるための学習行動や文化づくりの継続だ、ということを、本書は物語の設定でうまく示していた。社長職が二代目に渡された局面でわずかにずれた経営層の思惑が、組織縦割りの歪を拡げて、改善のためにと各々打つ手が顧客に響かず全体最適にフォーカスせず、そして収益が赤字に転じそうになる、という流れは、本来を置いてきぼりにした故の鉄板ストーリー。これは読者にとって、時間軸を含めて広い“森”を見るための地図にできるもの。

本書がタイトルに掲げている「戦略参謀」が、本書ではもちろん最大の要になっていた。たとえば、創業から組織が大きくなり何か課題が持ち上がっている会社では、社長周りのこの機能が不全である可能性がある、ということに気づかせてくれる。真に腑に落ちる物語。