路地の子

牛を捌いて暮らす場景の描写から語られていくのだが、血肉の色や町の匂いのそれに関しては、照らし合わせられるほどの実経験がこれまでの自分の中には無いわ、と圧倒的に悟らされる。さらに、「俺は将来こうなる」と定めた人間の半生変わらない貫き様は、なにかを訴えてくる神妙な力を放っているようにも思え、最後には著者自身の独白 (主人公は著者の父だ) も加わり、濁った余韻を残していくノンフィクションである。

本書では、同和問題に絡んだ同盟間の利権の奪い合いや、食肉業界が、近年に起こった事象からどのような影響を受けたか、具体的にはバブル崩壊やBSE問題 (牛海綿状脳症をめぐる問題)、東日本大震災の放射能問題での牛肉需要の冷え込みといったことも知ることができ、昭和から平成にかけての日本社会の表と裏を覗いている。

路地の子

路地の子

著者: 上原善広

出版社: 新潮社