なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか ― すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる
ロバート・キーガン (著), リサ・ラスコウ・レイヒー (著), 中土井僚 (著), 池村千秋 (翻訳)
邦題のタイトルだけでなんとなく内容を汲み取った気でいると、危険だ。「自己変革に取り組もう」の本ではもちろん無くて、「発達指向型組織をつくる」ところに主旨がある。原題は『An Everyone Culture』だ。とても読み応えがあった。
IT業界のある分野の、“経験技術のスペックシート”のみでヒトを配属しがちな商流の片隅に生息している身 (たとえば自分) にとって、著者らの調査成果として描かれている発達指向型な組織像は、現時点だとまったく異世界に位置する。
一方、そういえば自分の出身学部と研究科は「人間の発達」をテーマに1990年代前半に設立され、《生涯にわたって人間は発達するもの》とする捉え方を、社会科学のみならず自然科学でも各研究の基礎に置いていたのだった。この捉え方を思い出せば、DDO (発達指向型組織) が強い組織たる所以は、人間とはどんなヒトなのかを見つめた末の帰着としても導けるだろう。
“人間とは発達したいヒト”なのであって、組織の中でその営みを進めるには (みな発達途上なのだから) 個人が弱さも見せる必然があり、そうなると、守られてかつフラットに意見して気づき合う環境も必要になる。そして本書でいう強い組織は、個人の発達に長年つきあい相互作用して出来上がっていく、積極的な発達を続ける組織を指すのだろうと思う。