高熱隧道

ときどき読みたくなる吉村昭の、一作品。黒部第三発電所 (昭和11年8月着工) の水路などに用いる隧道の工事が、自然環境に抗う、どのように凄まじいものであったかを記録している。

それとともに、資材運搬中の転落死に始まり、ダイナマイトの自然発火による爆発や泡雪崩による宿舎の破壊で、おびただしい数の犠牲者が出る中、岩盤温度が160度を超えてその温度を下げるための放水が耐えられないほど熱い湯に変わっているという状況で、捨て身覚悟で掘削作業する労働者 (人夫) と指揮をし続ける技術者との、極限での想像もつかない異様な、心の疎通を止めた関係性を、一文一文に切り出している。

ひとの執念の力や、変容の様を思い知る。これに関して良いとか悪いとかは、わからない。

高熱隧道

高熱隧道

著者: 吉村昭

出版社: 新潮社