グローバル化の姿を、曖昧にしか捉えていなかった私は、この本から不意にその現実の形を教えられることになる。改めて述べると、グローバル化とは、既存の境界を越えて様々な現象が起こることだ。その境界は国境や国籍によるものとは限らない。都市の中の、人種や文化圏に基づくコミュニティや、各種の業界も、この意味の“グローバル化”の影響を受ける。
著者は社会学者。どういうふうにして当事者から信頼を得ていくのだろう、ドラッグやセックス経済に繋がっている人々の、……なんと書いたらよいか、社会的な関係性や本人の動機や心理を、実際に会って、とことん共に行動して寄り添うことで追いかけている。最終的には、春売りを統括するビジネスを主たる研究対象とすることに、活路を見いだしたように感じた。
日誌のような記述部分は文体をわざとそうしているのか、読みにくい部分があるけど、時折、社会学の言葉でニューヨークの現象を解説している学術的なフレーズが登場する。そんなふうに転移する本書の内容は、ものすごく面白くて、知的に興奮してしまうのだ。 そして、ヒトはなぜ、“自分を変えようとする”本性を持って行動する動物なのか?という探究を、著者が自分自身にも問いかけながら行っている様は、ヒトがいる限り続くテーマであるし、凛とした気持ちにさせられる。