【感想】 関東大震災

【感想】 関東大震災
関東大震災 (文春文庫)

関東大震災 (文春文庫)

著者: 吉村 昭

出版社: 文藝春秋

1923年9月1日に発生した関東大震災についての書物を、おそらくこれまでちゃんと読んだことはなかった。大震災に影響を受けた当時の人々と、社会情勢を知ることのできる渾身の記録に思う。

逃げ集まった人々が火災の海に飲まれ、水に逃げれば人が重なることで溺死という、状況描写には絶望しか覚えない。物資不足で困窮きわまるし、公衆衛生の大問題 (何万もの遺体の処理、避難者の糞尿や生活塵の処理) も発生するが、復旧のためには解決しなくてはならない。流言によって人々は錯乱し自警団や軍は常軌を逸して、“排除すべき者”をつくりだし、殺戮してしまう。

このような極限のしかし事実を、自分の頭に思い描いて覚え、それに立ち向かう困難や覚悟や、人の人たる性分と力を感じるための記録に思う。