リモートKVMをお手軽に実現する「GL.iNet Comet (GL-RM1)」を試した

お安いなぁ
必然性は抜きに、「ちょっと試したい」という気持ちと、抗いがたい物欲に駆動されてポチった、ガジェットについてのメモ。今回購入したものは GL.iNet Comet (GL-RM1) というカードケースサイズの機器だ。筐体はアルミ製で、USB関係とEthernet端子とHDMI入力端子が備わり、「Remote KVM over Internet」と銘打っている。
これまでに私は、リモートKVMをラズパイを使って自作してみる系のPiKVMの記事を2つ残してきている。その内容を思い出しつつ、Remote KVMの専用機としてGL-RM1の出来はどうなのか、調べてみたい。
種別 | 商品名 | 購入価格 | 購入店 | 購入日 |
---|---|---|---|---|
リモートKVM装置 | GL.iNet Comet (GL-RM1) | USD 79.00 | GL.iNet APAC | 2025-04-19 |

GL.iNet リモートKVMコントロールインターネット経由、4K解像度、テールスケールサポート、リモートキーボード、ビデオ、マウスコントロール、ホームオフィス、データセンター、IT管理、産業用アプリケーション用
GL.iNet
公式情報源
マニュアル, セットアップ
内容の充実したオンラインマニュアル類を参照できる。ざっと眺めておけば、何ができるかのか網羅できて安心だ。
専用アプリ
リモートKVMの操作を行う側のアプリは、Windows版とmacOS版が用意されている。なお、リモートKVMの画面はウェブブラウザで操作できるので、専用アプリは必ず必要というわけではない。
ユーザフォーラム
ユーザフォーラムの動きも活発のようだ。開発中のファームウェアの情報もあったりする。
使用感・気づいたこと
- ファームウェアは、購入時の V1.0.0 release2 から V1.2.1 release1 → V1.3.1 release2 [2025-07-18時点] と段階的にアップデートされた。
- リモートKVMの画面のUIは初見でも使いやすい。言語はEnglishと中文の2つから選択する。機能面では、PiKVMにもあったVirtual Media機能が使えそうだし、HDMIのEDID書き換えも可能になっている。マウスを微妙に動かし続ける「Mouse Jiggle」という機能もある。
- 統合されているTailscaleも実にあっさり使えて、ユーザの現場にフィットする便利な製品に仕立てようという意欲を感じさせる。
- 専用アプリとCloud Serviceは、私は今のところ必要性を感じないため試していない。
- リモートKVMの画面の詳細については、公式ドキュメント > Control Panel Introductionが全てだと思うので、ここは画面キャプチャを貼るだけにする。
- 横画面にしたスマホと接続した状態:
- ものは試しにと、Nintendo Switchと接続した状態:
個人的に注目した点
個人的に注目した点を、多少詳し目に書いてみる。
Point-1. SSHログインしてシェルが使える
ポートスキャンして22/tcpが開いていることに気づいた。ということは?
$ nmap 192.168.1.190 Starting Nmap 7.80 ( https://nmap.org ) at 2025-07-17 23:21 JST Nmap scan report for glkvm.local (192.168.1.190) Host is up (0.0045s latency). Not shown: 997 closed ports PORT STATE SERVICE 22/tcp open ssh 80/tcp open http 443/tcp open https Nmap done: 1 IP address (1 host up) scanned in 0.10 seconds
GL-RM1にはssh -l root IPアドレス
でSSHログインが可能である。利用可能なシェルは、BusyBox環境が提供するシングルユーザ状態のものだと思われる。
$ ssh -l root 192.168.1.190 root@192.168.1.190's password: [root@glkvm:~]# uname -a Linux glkvm 4.19.111 #1 SMP PREEMPT Thu Jul 3 06:32:31 UTC 2025 armv7l GNU/Linux [root@glkvm:~]# cat /etc/os-release NAME=Buildroot VERSION=2018.02-rc3-gf1944547 ID=buildroot VERSION_ID=2018.02-rc3 PRETTY_NAME="Buildroot 2018.02-rc3" [root@glkvm:~]# free -h total used free shared buff/cache available Mem: 733M 105M 454M 3.3M 173M 610M Swap: 0B 0B 0B [root@glkvm:~]# df -Th Filesystem Type Size Used Avail Use% Mounted on /dev/root squashfs 181M 181M 0 100% /rom devtmpfs devtmpfs 367M 0 367M 0% /dev tmpfs tmpfs 367M 96K 367M 1% /dev/shm tmpfs tmpfs 367M 2.0M 365M 1% /tmp tmpfs tmpfs 367M 272K 367M 1% /run /dev/mmcblk0p7 ext4 188M 4.7M 176M 3% /oem /dev/mmcblk0p8 ext2 1008M 1.5M 956M 1% /userdata overlay:/overlay overlay 1008M 1.5M 956M 1% / /dev/mmcblk0p10 exfat 5.8G 96K 5.8G 1% /userdata/media [root@glkvm:~]# python -V Python 3.12.5
Point-2. リセットボタンでOSを初期状態に戻せる
User Guideに記載のリセットボタン操作Reset (With device powered on, press and hold the button for 8-20s then release)
を実施すると、機器のOSを初期状態に戻せるようだ。具体的には次のような動作をすることが確認できた。
- SSHのHost Keyが変更される
- Admin Passwordが初期化される (ウェブUIへの初回アクセス時にパスワード設定画面になる)
- Firmwareのバージョンは維持されている
- Tailscaleの認証情報がクリアされる
- Reset実行前にテストで作成しておいた
/etc/test_hogehoge.tmp
は存在しない状態になる
つまりこれは、仮にいろいろ遊んでGL-RM1の環境を壊してしまったとしても (リカバリー領域の破壊は除く)、容易に初期状態に戻せるであろうことを意味する。
Point-3. USB-Cケーブル1本でのスマホ/PCの遠隔操作も可 (別機器を併用)
GL-RM1への映像入力はHDMI端子であるが、変換することでUSB-Cの映像出力を入力することもできる。その一例を、ある機器を併用してやってみた。
ある機器とは、Nintendo Switchと組み合わせての利用が第一に想定されていそうなACアダプター型の機器で、SwitchへUSB-Cケーブル1本で給電でき、USB Type-CのAlternate Modeを利用することで「Switchの映像出力がACアダプター側のHDMI端子からなされる」という機能と、USBハブ機能が備わったもの。なかなかに変態的な機器だったし安かったので、店頭で見つけて思わず買ってしまった。単に高出力なUSB充電器としても役立つだろうと踏んで。
種別 | 商品名 | 購入価格 | 購入店 | 購入日 |
---|---|---|---|---|
マルチドックチャージャー | HIDISC HD-PDHDMI44BK | 1,280円 | じゃんぱら 店頭 | 2025-07-13 |

HIDISC マルチドックチャージャー(合計最大44W)HD-PDHDMI44BK
株式会社磁気研究所
GL-RM1と、USB-Cによる外部ディスプレイ出力可能なスマホ (例: Google Pixel 9シリーズ) とを、上記の「マルチドックチャージャー」を用いて接続する、配線図は次のようになる。
flowchart TD; subgraph 遠隔地 A[Google Pixel 9等のスマホ/PC] <-->|USB-C 給電,映像+音声,キーボード+マウス| B[マルチドックチャージャー] B -->|HDMI 映像+音声| C[GL-RM1] C -->|USB-A キーボード+マウス| B D[USB充電器] -->|USB-C 給電| C C ---|Ethernetケーブル| E(LAN) end subgraph 操作者の現在地 E -..-|インターネット| F[スマホを操作する手元PC] end
当方の環境では、リモートKVMの設定にあるMouse Modeを「Absolute
」から「Relative
」へ切り替えることで、手元PCからスマホを違和感なく操作することができた。スマホ本体の再生音も遠隔モニターできる (たとえば、スマホ上のYouTubeを遠隔視聴できる)。このような実験を自室の中に閉じる形でやっていてもあまり面白みはないが、遠隔地同士でも同様に操作可能なのは大きな利点で、有用な場面が必ずあるだろう。
おわりに
リモートKVM装置を1台用意しておきたいという場合に、この GL.iNet Comet (GL-RM1) は、私の把握の範囲では最適解に思える。第一に、すぐに使える専用機でかつリカバリー可能というのは頼もしい。そして比較的安値。また、なぜかSSHログイン出来てしまうところ、ファンレスで小型であるところも大きな加点になる。ATXマザーボードのPowerボタンも操作したければ、別売りでATX Boardも用意されている。

GL.iNet リモートKVMコントロールインターネット経由、4K解像度、テールスケールサポート、リモートキーボード、ビデオ、マウスコントロール、ホームオフィス、データセンター、IT管理、産業用アプリケーション用
GL.iNet
追記: NanoKVMというもの [2025-07-20]
本記事を公開した後に、NanoKVMという、筐体がピンポン球程度のサイズのリモートKVM機器の存在を知った。公式WikiにTailscaleの導入方法も書いてある。これはGL-RM1の好敵手だなあ。