Surface Go 3: Windows 11とUbuntu 22.04 LTSのデュアルブート環境を構築する
Ubuntuデスクトップをモバイルしたい
「持ち歩けるタブレットでUbuntuデスクトップ (x86_64) を使うとどんな感じなんだろう?」とモヤモヤ興味が出ていたところに、別件で、Kindleの電子書籍が読める10インチほどのタブレットがあれば幸せになれるかもと私は気づいてしまった。
このサイズしか出版されてないから仕方なくA4で厚さ2cm強の参考書を物理で買ってきてから、はたと気づいた。
— Masahiko OHKUBO (@mah_jp) August 22, 2023
楽に持ち運んで読むためにはこれの電子版をタブレットで読めばいいじゃない?
そのためには10インチ程度のタブレットが要るじゃろ?
毎日価格調査してるあれ、ぽちったら一撃やろ?
むむ。
これはもう早急な解決を要する喫緊の課題 (自爆)。そして次のような考えや実験を経て、一度は使ってみたいMicrosoftのハードウェア、そしてSIMを挿して4G/LTEの電波が使える「Microsoft Surface Go 3 LTE Advanced」の8GBモデルが現状ベストだから、こいつを買っちゃおうと決めた。
- 電子書籍を読むタブレットといえばiPadが安牌な選択であるが、家族がすでにiPad AirとiPad mini (共にLTEモデル) をどこでも便利そうに使っていて、私もiPadだと面白みがちょっと足りない
- Surface Goシリーズは次のGo 4の発表が近い (2023年9月21日?) と噂されているものの、Ubuntu利用がメインならば最新ハードじゃないほうがOS対応の面で安定かなあと予想
- 某氏から借りることができた「Surface Go 2 LTE Advanced」を用いて実験したところ、Ubuntu Desktop 22.04にLinux-Surfaceを導入すると物理SIMでの4G/LTE通信はどうやら行えそうだと確認済み
購入したもの
ポイントが多めに付与される「ソフマップの中古の日」にSurface Go 3本体をまず購入し、その他必要なものはポイントも利用しつつ次のように揃えた。ちなみに今回の組み合わせでは、Surfaceの外観上の特徴となるタイプカバーにこだわった。店頭展示品に触れて試したときからアルカンターラの持つ質感に一目惚れだったし、バーガンディ (Burgundy) という濃い赤ワイン色を素敵に感じたのでここには妥協しなかった。
商品名 | 購入時の価格(税込) | 購入店 | 備考 |
---|---|---|---|
Microsoft Surface Go 3 LTE Advanced 法人向け (Win10Pro/8GB/128GB) 8VI-00043 | 61,980円 | ソフマップ店舗 | 中古, Office無し, 3,099ポイント還元 |
Microsoft Surface Go Signature タイプカバー 英字配列 (Burgundy) KCS-00041 | 15,300円 | Amazon.co.jp | 新品 |
Microsoft Surface Pen (Black) EYU-00007 | 実質3,881円 | ソフマップ店舗 | 中古, 元の価格6,980円に3,099ポイントを適用 |
ミヤビックス OverLay Plus 9H 低反射 液晶・背面保護フィルムセット O9HLSURFACEGOTWO/S/2 | 3,132円 | Amazon.co.jp | |
ミヤビックス OverLay Protector トラックパッド用保護フィルム OPSURFACEGO/2 | 998円 | Amazon.co.jp | |
YOUZIPPER Surface充電ケーブル/10cm SF-01 | 1,580円 | ヨドバシ.com |
マイクロソフト Surface Go 3 LTE Advanced/Office H&B 2021 搭載 /10.5インチ / 第10世代 Intel Core i3/ 8GB/128GB /プラチナ 8VH-00014
マイクロソフト
Surface Go Signature タイプ カバー [US 英語版 英字配列] (バーガンディ)
マイクロソフト
マイクロソフト 【純正】 Surface Pro 対応 Surfaceペン ブラック EYU-00007
マイクロソフト
ミヤビックス PET製フィルム 強化ガラス同等の硬度 高硬度9H素材採用 Surface Go 3 / Surface Go 2 用 低反射 液晶・背面保護フィルムセット 日本製 OverLay Plus 9H O9HLSURFACEGOTWO/S/2
ミヤビックス
Surface Go 用 トラックパッド用保護フィルム OverLay Protector
ミヤビックス
WindowsとUbuntuのデュアルブートを実現する
Surface Go 3にデュアルブート環境を作り、GRUBで起動OSをWindows 11またはUbuntu Desktop 22.04 LTSから選択できるようにする。これに必要な知見はLinux-Surface Wikiの次の2ページにまとまっているので、参考にしながら作業を進める。
- Surface Go 2 · linux-surface/linux-surface Wiki: ほとんどの内容はGo 2/3に共通らしくこちらに書かれている
- Surface Go 3 · linux-surface/linux-surface Wiki: Go 3固有の内容が少し書かれている
なお、容量が潤沢とは言えない128GBストレージにWindows領域を残す第一の理由としては、Surfaceのファームウェア更新や4G/LTE (WWAN) の利用実験をすんなり行うためには、基本的にWindows環境が必要だろうと予想するからである。
デュアルブート環境の構築手順
- Microsoftサイトの次のリンク先から「Surface Recovery Image」のWindows 11版をダウンロードしてUSBメモリに焼き、USBメモリを接続したSurface Go 3を「音量Downを長押ししたまま電源ON」でUSBメモリから起動して、Windows 11 Pro環境をリカバリーする (初期導入済のWindows 10を11へアップグレードする工数がこの上書き作業によって省ける)
- インストール完了したWindows 11を通常起動し、デバイスの暗号化を「OFF」にする
- 参考 (実際は無効化を行う): デバイスの暗号化を有効にする - Microsoft サポート
- Windowsの高速スタートアップを「OFF」にする
- Windowsで使用するSIMとして「SIM1」 (物理SIM; SIMカード) を選択する (一方の「eSIM」は文字通りeSIMを意味する)
- Surface Go 3を「音量Upを長押ししたまま電源ON」で起動してUEFI (BIOS) に入り、Security > Secure Bootで (Secure Boot certificate keysetとして) 「None」を選択する
- 同じくUEFIで、Boot configuration > Configure boot device orderを「1. USB Storage, 2. Internal Storage, 3. Windows Boot Manager, 4. PXE Network」の順番に変更する
- Ubuntu Desktop 22.04 LTSを既存のWindowsとデュアルブートするOSとしてインストールする
- 参考: Windows 10とUbuntu 18.04 デュアルブートする方法 | パソコン工房 NEXMAG
- Ubuntuインストーラが起動する際、画面の拡大率 (Scale) がデフォルトで200%となっていて、インストーラーのウィンドウの下方がSurface Go 3の画面からはみ出てしまい必要なボタンも見えない状態になる。この問題を避けるためには、いったん「Try Ubuntu」を選択してデスクトップ環境へ抜けて画面の拡大率を100%へ変更してから、デスクトップにアイコンがある「Install Ubuntu」を改めて起動するのが良い
- 実験環境では導入済のWindowsがストレージを約36GB使用していた。Windows 11のシステム要件 (参考: Windows 11 の仕様とシステム要件 | Microsoft) では64GB以上なのでWindows領域を64GBと決め、残り64GB弱をUbuntu領域とした
- WindowsとUbuntuの両方の環境で時計が一致するように、Ubuntu側でのハードウェアクロックの扱いを変更する
標準UbuntuでSurface Go 3のハードウェアはどの程度使えるか
Surface Go 3へUbuntu Desktop 22.04 LTS (ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso) をインストールした後、気になるのは、Ubuntuのデフォルト状態でSurfaceのハードウェアがどの程度正常に使えるのか。本記事執筆時点での最新Kernel 6.2.0-31-generic
にしている状態で確認したところ、次のように先行きの明るいナイスな対応状況であった。
機能 | 状態 | 備考 |
---|---|---|
タイプカバーのキーボード | 利用可能 | |
タイプカバーのタッチパッド | 利用可能 | |
Wi-Fi | 利用可能 | |
Bluetooth | 利用可能 | |
タッチスクリーン | 利用可能 | |
Surfaceペンのペン先側 | 利用可能 | 筆圧感知していることをOpenBoardで確認 |
Surfaceペンの消しゴム側 | 利用可能 | 消しゴムになることをOpenBoardで確認 |
4G/LTE | 未検証 | |
カメラ | 利用不可 | カメラには特別なKernelが必要な旨がSurface Go 2 · linux-surface/linux-surface Wikiの冒頭に記述されている |
4G/LTE機能とカメラ機能に関しては、Linux-Surfaceを追加導入してから後日確認するつもりだ (おそらくは問題ないはず)。Surfaceペンの筆圧検知と消しゴム機能の動作確認には「OpenBoard」というOSSを初めて使った。これは今後もSurface上でちょっとしたメモ書きする時に重宝するかもしれない。
Surfaceペンのトップボタンはどうか
Surfaceペンの端にあるトップボタン (消しゴム側ボタン) については、Surface Go 3とのBluetooth接続時にボタンを押して発生するキーコードをxev
コマンドで確認したところ、次のようになった。
操作 | キーコード | Windows上での動作 |
---|---|---|
トップボタン短押し1回 | keycode 198 (keysym 0x1008ffb2, XF86AudioMicMute) | 「Microsoft Whiteboard を開く」 |
トップボタン短押し2回 | keycode 197 (keysym 0x0, NoSymbol) | 「切り取り & スケッチを開く」 |
トップボタン長押し | keycode 196 (keysym 0x1008ff49, XF86Launch9) | 「付箋を開く」 |
ちなみにWindows上で上記の操作を行った時には、「Microsoft Whiteboard を開く」「切り取り & スケッチを開く」「付箋を開く」という動作となるらしいので、もし技術的に可能ならば、似たようなことをUbuntu上で行えるようにするのも面白いかもしれない。
追記 [2023-09-05]: Remapper
Linux-Surface Wikiにて、Surfaceペンのトップボタン (消しゴム側ボタン) のremapperらしきものを発見した。
環境が出来上がったらディスク全体をバックアップ
実際にやってみたら痛感するわけだが、Surface Go 3をWindows 11 Proのリカバリーイメージで復元し、Surfaceのファームウェア更新を含む可能性があるWindows Updateをすべて適用し、その後にWindowsとUbuntuのデュアルブート環境を実現するまでにはかなりの時間がかかる。そこでぜひとも、環境が出来上がったらSurfaceのディスク全体 (Windows領域とUbuntu領域) を外部媒体へ一度フルバックアップしておきたい。万が一、環境が壊れてしまったとしても、バックアップがあればゼロから環境構築するよりは簡単に復元できるはずだから。
ディスク全体のバックアップ・復元のツールといえば「Clonezilla Live」が定番。Clonezilla LiveをUSBメモリから起動して、画面のメニューや指示に従っていけば特にひっかかるところはなく、操作説明は省略。
- Clonezilla - About
- Clonezilla Live on USB > uEFI boot mode (GPT):
参考リンク
今回のSurface Go 3でも叶えたい「Kindleの電子書籍をUbuntu環境で読む」件については、Wine環境の構築メモを次の記事にまとめています。