本記事は、キーボード一体型「Raspberry Pi 400」の実機レビューです。ラズパイ400はUKのサイトから購入しています。
11月2日。仕事の後にTwitterを開くと、キーボード一体型ラズパイ「Raspberry Pi 400」の登場を、公式アカウントがつぶやいているのを見つけた。なんてキュートな佇まいなんだよ。
We completely redesigned Raspberry Pi 4 4GB to fit inside the new Raspberry Pi 400 https://t.co/YeUkamOHYc pic.twitter.com/7cXqWFqEPW
— Raspberry Pi (@Raspberry_Pi) November 2, 2020
マウスやケーブル類とガイド本をセットした “Personal Computer Kit” と、本体のみの “unit” の2種類がある。
従来の箱型「Raspberry Pi 4」のユーザとして特に気になる発熱の問題は、内蔵されている横長ヒートシンクにより解消されているようだし、「とにかくこれは買いだ」と、つぶやき発見から30分足らずでunitを発注していた。発注後は次の流れにて、約9日後にUKから日本に到着した。
キーボードモデルとしてはUSキーボードを選択。価格は、本体£66.90+送料£10.00=合計9,385円である。
上に書いた「とにかくこれは買いだ」は、直感に近い判断に基づいており、このラズパイの用途を真面目には考えぬままの発注だ。
1980年代、私が最初に触ったマイコンは、キーボード一体型の、親戚から譲ってもらったFujitsu FM-7とFM-8であった。カセット式で遊びやすいMSXマシンを羨ましく思いながらF-BASICでプログラムを作り、友達関係や学校の部活などでは、MZ-1500, PC-8201, PC-E200, PC-6000/6601, X1turbo, PC-8001/8801, X68000, PC-9801などに触れていった。
このような経験をもつ者にとって、キーボード一体型のRaspberry Pi 400は、当時コンピュータに熱くなっていたことの記憶が現代技術とともに凝縮された、魅力ある、不可避なオブジェクトに見えてしまうのではないか。……と、盛大に言い訳しときます。
UKから直接購入するRaspberry Pi 400には、「技適マーク」が、つまりWikipediaによると「技術基準適合証明と技術基準適合認定のいずれかあるいは両者の認証がなされていることを表示するマーク」が、貼り付けられていないとの情報があった。
そこで、今回のRaspberry Pi 400のような技適マークがない機器を日本国内で利用するべく、次の制度を活用する。
届出方法は、次のINTERNET Watchのページに詳しい。なお、届出時に記入しておきたいRaspberry Pi 400の「FCC-ID」は、たとえば外箱の裏面左下にFCCのマークとともに記載がある。
届け出に必要な物については、オンライン手続きの場合には、アカウント作成の本人確認の段階でマイナンバーカードが必要だ。私はコロナ禍の最中にマイナンバーカードを取得済みで、かつ、次のICカードリーダがたまたま家にあったので、比較的スムースに手続きできたと思う。「01-20201111-07-XXXXXX」という届出番号が付与された。
必要な物 | 今回用いた物 |
---|---|
PC | Windows 10とMicrosoft Edge導入済のPC (物理) |
ICカードリーダ | SCR3310 |
マイナンバーカード | 自身のもの |
NTTコミュニケーションズ 接触型ICカードリーダー・ライター e-Tax Win&Mac対応 SCR3310-NTTCom NTTコミュニケーションズ SCM ICカードリーダー/ライター B-CAS・住基カード対応 usb対応 SCR3310/v2.0 SCM Microsystems
Kitではなく本体のみの「Raspberry Pi 400 unit」の内容物は、あまりに清くて驚くほどだった。紙一枚の同梱もなく、本当にキーボード型の本体しか入っていない。
Raspberry Pi 400のストレージ (microSDカード) として、高耐久の64GBのものを用意した。これにラズパイ界の標準OSであるRaspberry Pi OSを書き込んで、動作確認を行った。
64GB 高耐久 microSDXCカード マイクロSD TOSHIBA 東芝 EXCERIA M303E CLASS10 UHS-I U3 R:98MB/s W:65MB/s SDアダプタ付 海外リテール THN-M303E0640A2
次のRaspberry Pi Imager (rpi-imager) を手元のパソコンにインストールする。私の場合はUbuntu環境にインストールしたので以降もこの前提で。
パソコンでmicroSDカードを読み書きできるようにしてから、Raspberry Pi ImagerをUbuntuのターミナルから sudo rpi-imager
で起動する。[CHOOSE OS] ボタンで「Raspberry Pi OS (32-bit)」を選択し、microSDカードへの書き込みを行う。OSイメージのダウンロード速度があまり出ないようで、完了まで10分以上かかる。
【追記・経験談】もし子ども (うちの場合は6歳児) がラズパイを使う予定があるならば、OSは、アプリケーションがより多く導入済みである「Raspberry Pi OS Full (32-bit)」のほうがベター。たとえばゲームだと、Minecraft Pi Editionやその他数種類がすぐに遊べるようになっている。
Raspberry Pi 400の端子面にある挿入口へ、OSイメージを書き込んだmicroSDカードを差し込む。次にUSB-C端子経由で本体へ電源供給することで、そのまま電源ONが実施される。microSDカードや本体の初期不良がなければ、Raspberry Pi OSが無事に起動してデスクトップ画面が拝めるだろう。
なお、これまでのラズパイと異なり、Raspberry Pi 400では電源ONをボタン操作で行うことができる。電源OFF状態のときに、キーボードの「Fn + F10」を押すと電源ONとなる。
Raspberry Pi 400のデスクトップ環境の操作は、主観では特に引っかかりなく軽快に動く感触だ。ベンチマークも走らせよう。手元の他のPCと性能比較ができる手軽な指標として、Octane 2.0 JavaScript Benchmarkを用い、それぞれ3回以上計測した平均値は次の通り。
PC | Octane Score Avg. | OS, Browser | 関連記事 |
---|---|---|---|
Gemini PDA | 5,126 | Android, Brave | 2019-03-15 |
Raspberry Pi 400 | 9,545 | Raspberry Pi OS, Chronium | 2020-11-14 |
Chromebook Spin 311 | 9,715 | Chrome OS, Chrome | 2020-10-13 |
MacBook Air 13 (Mid 2013) A1465 | 23,740 | macOS, Brave | |
ThinkCentre M75q-1 Tiny | 40,768 | Ubuntu, Brave | 2020-07-07 |
iPad Air (第3世代) A2152 | 43,426 | iPadOS, Brave | |
Mac mini (2018) A1993 | 48,751 | macOS, Brave | 2020-09-13 |
Raspberry Pi 400は、日本の販売代理店にて 8,750円(税別) での販売が予定されている。価格性能比の観点から、上記のスコアに不満はない。ちなみに今このブログ記事は上記のChromebook Spin 311で書いているが、この機種と同程度の操作感で使えそうだ。
Raspberry Pi 400は、佇まいのキュートさと低価格というポジションを併せ持った、そしてラズパイなので使いこなすためのナレッジも十分に蓄積された、パソコンの世界では比類ない面白い製品だ。Linux環境に触れてみたい方や、Linuxが動くおもちゃを欲する方には、強くおすすめできる。日本国内で容易に入手できるようになる頃にでも、実機に一度触れてみてください。
現段階の私がひとつ贅沢を言うならば、Raspberry Pi 400のキーボードの真ん中に、ThinkPadの赤いポッチ (TrackPoint) があったら良いな、とひらめいた。しかしTrackPointのようなやや繊細な部品を用いるのは、教育現場にも展開されるラズパイの、道具としての可用性を下げるデメリットもあるぞと考え直した。
ロジクール M331RD ワイヤレスマウス 無線 静音 3ボタン 電池寿命最大24ケ月 マウス M331 レッド 国内正規品
Logicool(ロジクール)
UKから直接購入したRaspberry Pi 400に関して、上記の2. 技適未取得機器を短期利用する手続で行った、「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」に基づく無線局の開設届出には、180日以内という期限が設定されている。私の場合は開設届出が「2020-11-11」だったので、その期限は「2021-05-09」。
そこで本日、下記サイトから当該無線局の廃止届出を行った。
開設の際に本人確認を伴うアカウント作成は完了しているので、今回はマイナンバーカードを使うことなく届け出が可能だった。今後のRaspberry Pi 400の利用時には、無線局として再度の開設届出が必要と思われる。その際には、前回と異なる実験の目的を考案して、それに基づいた届出内容になる。